エッセイ 発達障害

”あえて言う”ことの大切さ

男性、とりわけASDだと心の中で思っていても口には出さないことが多い。

これはメリットもあると思う。女性が喋った後、とっさに出てしまった失言を謝るシーンを人生でよく目にしてきた。喋らないことは人を傷つけない側面もあるということだ。

女性に対して「一度口に出てしまったものは謝っても取り返しがつかないのになぜ考えてから喋らないんだろう」と思う反面、男性はそんなシーンが少ないとも思った。

でも、表現を誤って相手を傷つけないようにするあまり会話が怖くなっていった。子供の頃からそんなことを考えていて気を使いすぎていてよくなかった。口数は自然と少なくなっていって気づいたから”あまり喋らない子”になっていた。

ASDの特性と言ってしまえばそれまでだけれど、自分の人生だし後悔のないように生きたい。女性のように”自信を持って会話をしたい。どうすれば相手のことを傷つけないようにそうなれるのかをずっと考えてきた。

コミュニケーション障害を持ったASDだからって人のことを考えていないわけではない。それを理解して貰うためにもがんばりたかった。

その甲斐あってか今は昔よりはずっとストレスなく会話ができています。

今回は僕の人生で”会話”をテーマに感じてきたこと。それと、どのように自信を持って話せるようになったかお話ししていきたいと思います。

少しでも僕と同じような境遇の人の参考になれば幸いです。

ASDとして感じてきたモノ

ASDとして感じてきたモノを思い出している男性

まずは僕が人生で会話について感じてきたこと。ASDにはどう見えているのかを書いていこうと思います。

ASDとはどんなものなのか知ってもらったり、共感してもらえたら嬉しいです。

会話の意味

特にASDは普通の男性よりしゃべらない。というより本当に必要なこと以外しゃべらない人が多い。自分もそうだったし、人から聞くASDもそんな特徴を持っている。

他の人から見たら言葉が足らなくてこちらが何を考えているのか伝わっていない。けれどASDは本当に必要最低限の報告や有益な情報以外の会話は時間の無駄と感じる。天気の話をはじめとした雑談や冗談、他愛のない話を普段からする人は嫌悪感すら感じてしまう。

そして、親にはもっとその特性があると感じる。

幼少期は自分の方が空気に耐えられないくらい家族みんながそれぞれのことをやっていて会話がなかった。自分が気にしているだけで一般的に家族はそんな感じかもしれない。

とにかくそんな家庭環境で育ったので、余計に口ベタになっていた。様々な生活の要素が、自分を自然としゃべらない方向にいっていた気がする。

コンプレックス

かいと
かいと

どうして自分は『相手が自分を知る上での必要な情報』を言葉で表現できないのだろうか…

これはASDになる前からずっと悩んでいた。当たり前とされていることに疑問を持ちすぎるし、自分独自の視点を持ってなくて置いてかれている、という感じがして常に焦っていた。

ASDと分かってからは余計に”コミュニケーション障害”という特性を意識したりする。そして、会話の後や周りの自分に対してのイメージを聞くたびにそう思っていた。

そのような会話の脳が普段から鍛えられていないと、いざそれをやろうと思ってもできない。頭の中ではこれを言いたい!が脳で整理できずにいつも喉元でセーブされる。そんなもどかしい生活が続いた。

幼少期は「何でそれが分からないの?」という、さも相手に原因があるかのような思考で、言葉が足りていない自分に気づいてすらいない。「なんでみんな分からないんだろう…」というくらいの感想しかでなかった。

会話の意識の変化

トレーニングを継続することで意識の変化を感じている女性

ここからは人生のどんなきっかけで会話に自信が持てるようになったか。意識の変化と実際に喋れるようになった部分をご紹介していきたい。自分以外の会話や人に対して自信がない人への参考になればと思います。

異性(女性)に対する意識

会話ができないと当然、異性に対しても関わりが持てなくなってくる。ASDの宿命と言ってもいいくらいの『彼女いない歴=年齢を』年々更新していく不安がすごかった。

それだから恋愛に関する動画や本など何でも見てきたし読んできた。モテ講座に申し込んで200㎞離れている東京まで行ったりもした。

それらを経験するとある共通点があることが分かった。それは…

  1. 相手の話にリアクションする
  2. 笑顔でいる
  3. ポジティブなことを言う

特に①に関しては「オウム返しでもいい」とか「へぇ~それいいね!」などの簡単なものでもいいらしい。

これを聞いたときの自分は

それを言われて嬉しいの??

というもの。ASDだけじゃなく男性ならあまり意味を感じないやりとりだと受け取る人は多いはず。

「それでも女性の感じ方は違うしやってみるか…」という感じで会話に取り入れてみると反応は違って効果があった。

相手は自分の話に興味を持ってもらえたと感じるらしく、その簡単な切り返しでもそこから自分の話をしてくれる。

さすがにわかりやすく全てその通りになるわけではない。だけど、言うのといわないのとでは反応が違う

雲を掴むような感覚で最初は言うのに抵抗感がすごかったし、今でも少しわざとらしい部分がでているのを自分でも感じている。それでもやる効果はある。相手はその違和感よりも興味を持ってもらえた嬉しさの方が大きいようだ。

この「オウム返し」「へぇ~それいいね!」は簡単だが使える。どれだけ”あえて言う”という心が追いつかない感覚があってもやってみる価値がある。

自信がない人がいきなりやるのは抵抗感がある。僕もそうだった。でも、いまは意識の中に置いておくだけで大丈夫。

実践するための自信はこれから紹介する”一人の状態でやれること”で自然と身についていった。

食事を変えてからの変化

余裕ができた大きな要因の一つとして食事を変えたことがあると思う。食事について詳しくはこちらの記事を

慢性的な疾患や病院で治せないものも改善する食事法-Kaito Blog
慢性的な疾患や病院で治せないものも改善する食事法-Kaito Blog

あなたは、病院でも「これは付き合っていくしかない」程度に言われてどうにもならなかったというアレルギーや慢性的な不調はありませんか?僕、かいとはどれだけ体が弱かったのかの苦悩とやっと辿り着いた究極の食事 ...

www.asd-ykmr.online

これは上の記事でも言っているとおり、正しいやり方ができているわけではない。実際にやるにあたって正しいやり方を教えてくれるクリニックを見つける必要があるし、自炊がマストになるので継続するのにも覚悟が必要。

それでも自分の人生を変えたいならこの手段を知っていることはメリットになるはず。

そのくらい自分という人格や個性をはっきり知ることができた。それまでは無気力で趣味もろくにない、つまらない人間としか思っていなかった人間の人生に光がさした。

そのくらいの大きな変化があったのでぜひ覚えておいてほしい。これを読んでくれた人が”変わりたい!”と思ったタイミングできっとその気持ちに応えてくれるものになるはず。

会話について具体的にどのような変化があったかというと、

  • 脳の霧が晴れて考える余裕が出てきた
  • 服や旅行に興味がでてきて自然に話のネタが増えた
  • 過去にした会話を振り返り反省する余裕が生まれた
  • 会話中にも相手の言葉の意味を察しスムーズに会話することができるようになった

④は未だに全て気づけている訳ではないと思う。ASDの特性の『言葉をそのままの意味に受け取る』という特性があり、それが会話のネックになっていたけれど、食事を変えてからはある程度『相手の意図』をくみ取ることが増えてきた気がする。相手の反応を見ても違うのでそう思う。以前は会話の終わりに違和感がすごくあったのがなくなっていたりするので

それに加え、上の「オウム返し」「へぇ~それいいね!」を加えるとだいぶ定型発達の人と同じような会話ができていると実感。

それと②の”自然に”というのは割と大事なワードで、「オウム返し」「へぇ~それいいね!」などは意識して使うテクニックになるため、いざ実践では言葉が出てこなかったり、自分が思っていたより上手くいかないことが多い。

それより、大抵の人が関心を引くネタに興味を持つことで気づいたら会話ができるようになっているパターンがあるし、そうでなくてもいろんなことを経験することは相手の興味のあることに合わせられる訓練にもなる。

モテ講座などを否定するわけではないけれど、会話は生もの。どれだけ自然に意識せずに言葉がでてくるかが鍵になる。

誰かと話す前に”どれだけ力を抜いて話せる状態”を準備できるか。この要素を普段から気にして過ごしていると人との会話ハードルがかなり下がる。

自宅トレーニングでついた自信

フィジカルが変わることで余裕ができて、スタイルがよくなって自信も出てきて…そんなそんなときに自分が変わったと感じた。そのタイミングで意識しなくても自然に足りない部分を言葉に出せるようになっていた。

実践レベルでも『言葉の足りなさ』がなくなったように実際に感じたのは体を鍛えて数ヶ月経ったくらい。そのくらいになると実際に鍛えた効果が出てきてスタイルが変わる。スタイルが変わることで自分にも自信が出るし、周りの見る目も自然と変わってくる。

それまでは、いくら頭で「ここではこのセリフが必要」と分かっていても口から出ない。技術的なことより自信のなさが邪魔をしていたんだとこの時初めて分かった。

会話のために一人の時間を使ってできることは意外とある。そして、みんな力の抜けた状態で会話しているのだからこちらも周りと同じハードルに合わせるのがスムーズに会話ができるようになる一番の近道だろう。

言葉に出さない生活を続けていていきなりしゃべろうとするのは簡単じゃない。かと言って会話力を鍛えるために誰かが自分の相手をしてくれるわけでもない。だからこそ、一人の時間を利用して自分を変える手段を知っておくのは大切だと思う。

実際にやっていたトレーニングはこちら。ちょっとでも思い立ったのなら少しでも参考になればと思います。

トレーニング - 発達ライフディスカバー
トレーニング - 発達ライフディスカバー

あなたの暮らしのコンシェルジュ

www.asd-ykmr.online

HSPの良い部分

HSPの良い部分を表したハート

しっかり会話ができるようになってきてよく言われるようになったことがある。それは「かいとさんはよく気が利く」とか「細かいところに気づいてくれる」とかとてもポジティブなものだ。

冒頭で言った「気を使う」とか「傷つけないように」みたいな部分はHSPの特性だ。本来、マイナスな部分として自分も含め、当事者の人は良くないイメージを持っているであろうもの。そんな繊細な部分が人から”プラスな部分”として受け取られるようになっていた。

”あえて言う”効果がこんな所にもでてきていた。

今までは自信がないから表に出せていなかった。でも、いざ表現してみると人からこんなに評価される。自信がなかっただけで根っこの部分ではいくらでもこんな感じで良い評価をもらえる要素は元から持っていたんだろうに、ASDの”わざわざ口に出して言うほどのことでもない”という特性から来る感覚のせいで頭の中に留まったままだった。

それを思うと今まで数え切れないほどの損をしていている気がする。今の自分の状態で人生のあのシチュエーションをやり直したいと思う場面もたくさんあるけれど、その成仏させられない後悔も含めて大きく学んだという実感もある。

逆を言えばそうやって振り返られる余裕が今はある。同じシチュエーションはなくても幼少期の”会話にもどかしさを感じていた自分”を救ってやれる行動は今からいくらでもできる。

HSPさんにもこの記事の一人でできる手段は知っておいてほしいと思う。きっとあなたの繊細さは人をいい気分にさせるものだ。

まとめ:素直に言葉に出す&あえて言うことの大切さ

これを読んでいる人の中にも気づいたら親しくなりすぎてあまり喋らなくなっていたり、お互いの気持ちを表現しなくなっていたり、いわゆる”マンネリ”の状態に陥っている人は居ると思う。

一度そうなったらお互い牽制し合って、どちらからもアクションを起こせないような空気感、嫌だけど沼から抜け出せない状態が延々と続く。

そんなときはこの記事のことを思い出してほしい。意識して言うことの大切さやひとりの時間を使って自然に言葉に出せるようになること。今もその人と関係が続いているなら、それらを意識することで状況は好転するはずだ。せっかく一緒に過ごしているのに、わかり合えないのはもったいない。

この記事は発達障害である僕の特殊な例ではない。思い当たる人全員に参考にしてほしい。親しい間柄では、分かっているようで伝わっていない。言葉が足りなかったりすることが多い。

お互い慣れて日常に忙殺され余裕がなくなると会話が減る。一度そうなると会話を切り出しづらくなり、「この人とはこういうものだ」と納得し、関係が悪循環になる。

そうならないように、その人の存在が当たり前になっても、気持ちを“あえて言う”ことを意識してほしい。それは大きな告白でなくても、何をしてほしいか、言葉の意味や直してほしいことを話し合うなど、細かいけれど大切なことがある。

それは人並み以上に”あえて言う”ことをしてこなかったASDだからこそ余計にそう感じる。

-エッセイ, 発達障害
-, , ,